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借地人の無断建て替え、どう対処すべきか? 〜地主が取るべき対応と予防策を徹底解説〜

「最近、借地に工事の足場が組まれてるけど、何の連絡もない」
「勝手に家を建て直しているようだが、地主として許可した覚えはない」
こうした“無断建て替え”トラブルは、実は日本全国で頻発しています。

地主としては、建て替えのたびに「建築承諾書」や「承諾料」を想定しているケースも多く、無断で建て替えられることは財産権の侵害にもなりかねません。
しかし、現実には「もう工事が進んでいる」「借地人が悪気はないと言い張っている」など、対応が難しくなる場面もあります。

本記事では、地主が「借地人の無断建て替え」に直面した場合にどう対処すべきか、
さらに再発を防ぐために取っておくべき予防策を3部構成で詳しく解説します。

第1部:借地契約における「建て替え承諾」とは何か?

■ 借地権の性質と地主の承諾権
借地契約において、土地は地主の所有であり、建物は借地人の所有となります。
建物を建てることは「借地権の根幹」ですが、その建て替えには大きく分けて2種類の扱いがあります:

契約に「建て替えには地主の承諾が必要」と定めているケース

契約にその記載がない、または黙示的に承諾されているケース

多くの古い借地契約では、建て替えについての具体的な記載がないこともあり、解釈が分かれる余地があります。
そのため、地主としては「承諾権を明示的に契約書に入れておく」ことが極めて重要になります。


■ 建て替え承諾とは何を意味するのか?
建て替え承諾とは、借地人が現在の建物を取り壊し、新しい建物を建てる際に、地主がその行為に同意することを指します。
この際、地主が承諾することで「借地契約が更新された」と見なされる場合もあり、法的には極めて重要なタイミングとなります。

また、建て替えにあたっては次のような書類が必要となることもあります:

・建築承諾書

・増改築承諾書

・建築確認申請書の同意欄

地主の承諾は、借地人の建築行為を合法化する“鍵”とも言えます。

■ 地主が承諾することで期待される利益

地主としては、承諾に際して「承諾料(建て替え承諾料)」を請求することも一般的です。
相場は地域や契約内容によりますが、底地価格の数%〜10%程度が慣例です。

また、承諾と引き換えに地代の見直しや、契約期間の再設定を交渉することも可能です。
地主としては、建て替えを機に「契約条件を見直す絶好の機会」として活用することができます。

第2部:無断建て替えが起きたとき、地主が取るべき具体的対応

■ ① まずは事実確認と証拠収集

無断建て替えに気付いたら、まずは冷静に現地確認と証拠保全を行いましょう。
地主としての感情的な対応は避け、以下の情報を整理します。

・工事が始まった日

・借地人からの通知の有無

・建物の構造や規模の変化

・写真・映像での記録

可能であれば、現地を訪問し、借地人または施工業者から事情を聞くことも有効です。

■ ② 借地契約の確認と法的根拠の整理

次に、借地契約書を確認し、「建て替え承諾に関する条文」がどう記載されているかを確認します。

・「事前承諾が必要」→ 無断建て替えは契約違反

・「承諾に関する記載なし」→ ケースバイケースの法的判断

また、裁判例では「建物の老朽化による建て替え」は、地主が一方的に拒否できない場合もあるとされており、借地人の権利も一定程度保護される傾向があります。

そのため、地主は感情ではなく、法的根拠と事実関係をもとに対応を検討すべきです。

■ ③ 内容証明などで意思を明確にする

無断建て替えに対して、地主が強く抗議する場合は、「内容証明郵便」を用いて意思表示をすることが有効です。

例:

・「建て替えに関して承諾しておらず、事前通知も受けていない」

・「現時点では承諾できないため、工事中止を求める」

・「今後の対応については専門家を通じて協議したい」

このように、地主が明確な立場を示すことが、交渉上の主導権を握る第一歩となります。

■ ④ 弁護士等の専門家と連携する

建て替え工事が進んでしまっている場合や、借地人が話し合いに応じない場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが不可欠です。

・契約違反による解除が可能か?

・建物収去請求の余地はあるか?

・損害賠償の対象となるか?

地主としては、法的リスクを整理し、冷静かつ確実に対処する戦略を立てることが重要です。

第3部:地主が無断建て替えを防ぐためにできる5つの対策

■ 対策①:借地契約の更新・見直し

まず最も効果的な対策は、「借地契約の条文見直し」です。
特に以下の内容を明文化しておくことで、地主の承諾権が強くなります。

・建て替え・改築には事前承諾が必要

・無断建て替えの場合は契約解除もあり得る

・地代や承諾料についての定め

契約が古い地主は、今一度専門家に契約内容の点検を依頼すると良いでしょう。

■ 対策②:定期的なコミュニケーション

地主が借地人と年に1回でも面談や書面のやり取りをしておくことで、「勝手なことはしにくい」という意識を持たせることができます。

地主として、

・定期的な通知(確認書など)

・管理会社を通じた接触

・親族への継承体制の整備

などを実施することで、良好な関係性を保ちつつ、管理体制を強化することが可能です。

■ 対策③:建て替え希望者には明確な手順を提示

「建て替えを希望される場合は、〇ヶ月前までに書面で通知してください」

「建築承諾書に必要事項を記載し、承諾料についても協議します」

こうした手順を借地人に事前に示しておけば、トラブル回避につながります。

地主は「誠意ある貸主」としての姿勢を見せつつ、自らの権利はしっかり守ることが重要です。

■ 対策④:承諾料の相場と支払い方法を明確化

建て替え承諾に対する承諾料の請求は、慣習として広く認められていますが、金額についてトラブルになることもしばしばです。

地主としては、地域相場や税務上の影響(不課税かどうか)を理解した上で、合理的な金額設定と分割方法などを事前に検討しておくことが望ましいです。

■ 対策⑤:家族・後継者にも対応方法を伝えておく

地主が高齢になり、建て替えに気づかないまま進んでしまうケースも増えています。

将来のトラブルを防ぐためにも、地主は

・借地管理の方針を明文化

・家族信託や任意後見制度なども検討

・借地人との接触窓口を明確にする

といった形で、次世代にも引き継げる管理体制を整えておくことが賢明です。
借地人による無断建て替えは、地主にとって感情的にも法的にも大きなインパクトを与えます。
しかし、黙って見過ごすことは、地主の権利放棄にもつながりかねません。

地主として大切なのは

・事前に契約内容を明確にすること

・無断行為があれば、冷静に事実を押さえ、意思表示をすること

・今後の予防策として、契約・管理体制を強化すること

建て替えは地主にとって、交渉の大きなチャンスでもあります。

「無断か、承諾か」で対立するのではなく、地主が主導権を持って「公正な関係性」を築くことこそが、将来のトラブル回避につながる最良の手段です。

地主としての立場を守るために、今こそ「見直す・整える・話し合う」行動を起こしてみてはいかがでしょうか。
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