再建築不可物件を賃貸運用する方法 ~地主が“使えない土地”を“稼げる土地”に変える実践術~
「再建築不可物件」と聞いて、あなたが地主であれば、まず思い浮かべるのは「売れない」「貸せない」「使えない」といった否定的な言葉かもしれません。
しかし、これは半分は誤解です。
たしかに再建築不可物件には制限がありますが、建て替えができないだけで“使えない”わけではないのです。
実際、再建築不可の古家を活かして高利回りの賃貸経営を行う地主も増えています。
相続で取得して困っている物件、売却しても二束三文の土地、そうした“厄介者”が地主にとって新たな収益源になり得るのです。
本稿では、再建築不可物件をどうやって賃貸に回し、地主の収益物件として成立させるのか、その方法と注意点を3部構成で解説します。
第1部:再建築不可物件の現状を理解する
◆そもそも「再建築不可」とは何か?
再建築不可物件とは、建築基準法で定められた「接道義務」を満たしていない土地にある建物です。
通常、建物は幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。これを満たしていないと、建て替えが認められません。
地主がこのような土地を相続や購入で取得した場合、
「再建築できないから価値がない」と考えてしまいがちですが、既存建物があればその活用方法は残されています。
◆再建築不可でも賃貸は可能
大前提として、再建築不可=賃貸不可ではありません。
現在建っている建物が「居住に適している状態」であれば、そのまま賃貸に出すことは可能です。
また、多少のリフォームや補修を加えることで、“格安賃貸”として需要のある市場に適した物件へと変えることができます。
特に、以下のようなニーズにマッチします。
・家賃をとにかく抑えたい若者・単身者
・アトリエやSOHOとして利用したい個人事業主
・ペット可物件や古民家風物件を探す層
地主としては、「完璧な新築住宅に住みたい層」ではなく、
「条件は妥協するが、家賃を抑えたい層」をターゲットにすることが成功の鍵です。
◆地主が賃貸活用する際のメリット
再建築不可物件を賃貸することで、地主には以下のメリットがあります。
・相続した土地・建物を収益化できる
・売却よりも高い収益性(利回り10%超も)
・固定資産税・維持費の自己負担を回避
・将来の売却時に“収益物件”としての評価がつく
活用せずに放置すれば、空き家対策条例の対象になり、罰則を受けるケースもある昨今。
地主としては“使わない”選択肢より、“貸して収益を得る”という方針が賢明です。
第2部:再建築不可物件を賃貸する具体的ステップ
◆ステップ① 建物の状態確認と安全性のチェック
まず地主として確認すべきは、建物が「賃貸できる状態にあるかどうか」です。
チェック項目は以下の通りです。
・雨漏りやシロアリ被害がないか?
・水道・電気・ガス等のライフラインが使えるか?
・建物の傾き・床鳴り・壁のひび割れは?
・耐震性は問題ないか?(築年数により要確認)
リフォームが必要な場合でも、すべてを新品にする必要はありません。
ターゲットに合わせた「最低限の改修」で済む場合もあります。
◆ステップ② ターゲット層と賃料設定の工夫
再建築不可物件は、「利便性」や「新築性」で勝負できないため、地主は賃料の設定とターゲットの明確化が必須です。
例:
・月4~6万円程度の“訳あり物件”として単身者向けに
・家族向けではなくシェアハウスにする
・作業場や工房として貸す
「古くてボロい=使えない」ではありません。
「古くても使える、面白い」と感じる人はいます。
地主が“万人向け”を捨て、“ニッチ市場”に特化すれば、空室リスクを減らすことも可能です。
◆ステップ③ 賃貸管理と契約時の注意点
再建築不可物件の賃貸において、地主が特に注意すべき点は以下のとおりです:
・修繕義務の範囲を契約書で明確にしておく
・建て替え不可の旨を説明し、誤解を防ぐ
・借地借家法による「居住継続の権利」が発生することを認識する
・火災保険・家財保険などへの加入義務を設定する
また、賃貸管理を専門業者に依頼することも視野に入れましょう。
地主自ら管理できない場合でも、適切な契約とサポート体制があれば、安定収益が得られます。
第3部:地主が抱える不安とその解消方法
◆「借り手がつかないかも」という不安
これは再建築不可物件に限らず、すべての不動産に共通する不安です。
しかし、以下のような方法で貸しやすさを高めることが可能です。
・写真・動画を活用して“味のある古家”としてPR
・地元の不動産会社と連携し、地域密着型で募集
・マンスリー・シェアハウス・DIY物件など差別化戦略を採用
地主が積極的にプロデュース意識を持つことで、「借り手が見つからない」リスクを大きく減らせます。
◆「老朽化による事故が心配」という懸念
確かに古い建物はリスクを伴います。
しかし、これも事前のインスペクション(建物診断)と必要最低限の改修で対処可能です。
・雨漏りチェック
・漏電チェック
・シロアリ点検
・地盤調査(必要に応じて)
地主が“自分の目と手で安全性を担保する”姿勢が、長期的な賃貸経営の成功につながります。
◆「売却との比較で迷う」場合の判断基準
「いっそ売ってしまおうか」と思う地主も多いでしょう。
しかし、以下のような判断基準をもとに考えると良いでしょう。
【初期費用】
売却:ほぼ不要
賃貸:改修費が必要
【収益】
売却:一時的に現金化
賃貸:継続的な収入
【評価】
売却:安く売られる傾向
賃貸:利回りで評価される
【相続税対策】
売却:現金化で資産圧縮
賃貸:借家権で評価減
地主にとってのベストな選択肢は、「所有目的」と「ライフプラン」によって変わるのです。
再建築不可物件は、確かに制約の多い不動産です。
しかし、地主が適切に向き合い、工夫と戦略をもって賃貸運用すれば、それは**“収益物件”として再生**します。
・ターゲットを絞る
・改修費用を抑える
・安全性を確保する
・契約と管理を丁寧に行う
これらを一つ一つ実行していくことで、地主にとって“負の資産”だった土地が、
“地域に求められる住まい”へと変わる可能性を秘めているのです。
諦める前に、一歩踏み出してみてください。
地主の手で、活用できる選択肢はまだまだあります。