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地主さん向けコラム

借地権譲渡に地主が「承諾」する際の注意点 〜承諾が「義務」になる前に、地主がすべき準備とは〜

「急に借地人から『借地権を第三者に譲渡したい』と言われた…」
「知らない人に勝手に土地を使われるなんて困る」
こうした相談は、実際に多くの地主から寄せられています。

借地契約が長期に及ぶ中で、借地人が高齢となり、相続や売却、事業承継の一環として借地権の譲渡を申し出るケースは増加しています。
しかし、借地人が勝手に第三者に借地権を譲渡することはできません。地主の「承諾」が必要です。

その一方で、地主としても慎重にならざるを得ません。
譲渡相手が信頼できる人物か? 契約条件はどうなる? 将来的にトラブルの火種にならないか?
一つ間違えると、「一度承諾したがために不利な契約が延々と続く」という事態もあり得ます。

この記事では、地主が借地権譲渡の「承諾」を出すときに見落としがちなリスクと対策を、3部構成で詳しく解説します。

第1部:借地権譲渡とは?地主の権利と義務を再確認

■ 借地権譲渡とは何か?

借地権譲渡とは、借地人が第三者に自身の「借地権」(土地を借りて建物を建てる権利)を引き継がせることを指します。

たとえば、借地人が所有する建物を売却する場合、その買主は同時に借地権を引き継ぐことになります。
これは、建物と借地権が一体であるためです。

■ 借地借家法における地主の「承諾権」

借地借家法では、借地人が借地権を譲渡する際、地主の承諾を得なければならないと定められています(同法第19条)。
これは、地主の権利を守るために重要な規定です。

地主が承諾しない場合でも、借地人は「裁判所に許可を求める」ことが可能です(=代替制度)。
ただしこの場合でも、地主には相応の事情説明や譲渡先の信用性を主張するチャンスが与えられます。

■ 地主の立場で重要なチェックポイント

地主としては、以下の点を慎重に確認しなければなりません。

・譲渡先の信用性(支払能力・人格・職業など)

・地代の支払能力があるか

・建物用途が従来と変わらないか

・将来的な再譲渡・転貸リスクはあるか

・借地契約の条文で譲渡制限がどう記載されているか

地主の承諾は「形式的なもの」ではなく、将来の土地管理に直結する重要な判断なのです。

第2部:地主が直面する借地権譲渡トラブル事例と教訓

■ 事例①:無断譲渡された借地

ある地主は、借地人からの報告がないまま、土地の上に新しい人物が住み始めていることに気付きました。
調べてみると、借地人が第三者に建物を売却し、結果として借地権が譲渡されていたのです。

地主が承諾していない以上、これは契約違反です。
しかし裁判所は、建物の所有権が正当に移転していることを理由に、地主の主張を全面的には認めず、結局地主側が不利な条件で妥協せざるを得ませんでした。

地主が情報を見落としていたことが、交渉力の低下を招いた典型例です。

■ 事例②:譲渡先が問題のある人物だった

地主が承諾した譲渡先が、反社会的勢力と関係がある人物だったというケースもあります。
その結果、地代の未払い、契約違反行為、周辺住民とのトラブルが発生し、地主が矢面に立たされる形になったのです。

このようなリスクを防ぐためにも、地主は譲渡先の属性確認(身元・反社チェック・事業内容)を怠ってはなりません。

■ 事例③:譲渡後に地代の値上げを拒否された

ある地主は、譲渡にあたって新しい地代を設定しようと考えていました。
ところが、借地人は「前の契約をそのまま引き継ぐべきだ」と主張。譲渡先もそれを盾に交渉を拒否し、結局旧地代のままで継続することになりました。

地主が「承諾書」に新条件を明記していなかったことが原因です。
承諾=無条件ではないという点を明確に文書化しておくべきだったのです。

第3部:地主が譲渡承諾を出す前にすべき5つの準備

■ 準備①:譲渡承諾の「条件」を整理しておく

地主は、譲渡を一律に拒否することは困難です。
一方で、「一定の条件付きで承諾する」ことは可能です。

たとえば

・地代の見直し(増額交渉)

・建物用途の継続(住宅→事業用途は不可など)

・再譲渡時の連絡義務

・建物修繕計画の提出

こうした条件を整理し、書面に盛り込むことが地主にとっての防衛線になります。

■ 準備②:借地契約書を確認・再整備する

多くの借地契約書は昭和時代に作られたものであり、譲渡に関する規定が曖昧だったり、現代のトラブルに対応できていなかったりします。

地主としては、

・契約の譲渡・転貸に関する条項を明記

・必要に応じて覚書・補足契約を締結

・公正証書による記録化

といった措置を講じることで、自らの権利を守ることができます。

■ 準備③:譲渡承諾書には明確な文言を入れる

口頭の承諾では、後日「そんなことは聞いていない」とトラブルになる可能性があります。
地主が承諾する場合は、必ず書面(承諾書)を交わし、以下の内容を明記しましょう:

・譲渡の目的(建物売却など)

・承諾の範囲と条件(地代、契約内容の継続可否)

・譲渡先の情報(氏名・住所・職業など)

・反社チェックの確認済み記載

・今後の再譲渡時の取り決め

これにより、地主としての意向と立場を明確にしておくことが可能になります。

■ 準備④:専門家と連携する

借地権譲渡の承諾は、民法・借地借家法・不動産登記法など複数の法律が関係します。
地主がすべてを把握するのは困難です。

以下のような専門家と事前に連携することで、リスクを抑えることができます:

・不動産に強い弁護士

・土地家屋調査士

・司法書士(登記実務)

・不動産コンサルタント

地主としての意向を、法的に守ってもらうための体制を築いておきましょう。
借地権の譲渡は、地主にとって避けて通れないトピックです。
しかし、承諾を出す・出さないの判断を「感情」や「慣習」に頼っていては、トラブルの火種を自らまくようなものです。

地主として重要なのは

・譲渡の目的と背景をきちんと確認する

・借地契約と承諾条件を明文化しておく

・書面によって合意を記録する

・借地人との関係を保ちながら、交渉力を発揮する

譲渡承諾は「地主の同意ありき」という建前がありながらも、実際は裁判所の許可制度もあり、地主の立場は年々厳しくなってきています。

だからこそ、地主が“主体的に”動くことが、土地の資産価値と管理効率を守る最善の道なのです。

地主として今後も借地との関係を円滑に保つために、譲渡承諾という機会を“危機”ではなく“管理改善のチャンス”として捉えていきましょう。
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