土地の「一部貸し」収益モデルとは? ~地主が低リスクで始められる“部分活用”の戦略~
土地を所有している地主の多くは、「何も建てないと固定資産税がかかる」「でも建物を建てるのはリスクが大きい」といった悩みを抱えています。
空き地のまま放置すれば税金だけがかかり、アパートやテナントビルを建てれば空室や修繕のリスクが重くのしかかる。
こうしたジレンマを抱える地主に、近年注目されているのが**「土地の一部貸し」**という考え方です。
これは、所有している土地の一部だけを切り出して貸すという方法で、残りは手元に残しながら収益を上げていくスタイルです。
・月極駐車場の一部をキッチンカーに貸す
・農地の一部を貸し農園にする
・自宅隣接地の一角をコンテナボックスにする
・広い敷地の一角をイベント開催用に貸す
このように「一部だけを貸す」ことで、低リスクで始められる収益モデルが成立します。
本記事では、地主の視点から「一部貸し」がどのように機能するのか、どんな活用事例があるのか、注意点は何かを3部構成で徹底解説します。
【第1部】「一部貸し」という発想の強みと地主が得られるメリット
■ 「一部貸し」とは何か?従来の発想との違い
多くの地主が土地活用を考えるとき、「全部貸すか」「全部使うか」の2択になりがちです。
ところが現実には、土地の一部だけを貸し出すことで十分な収益が得られるケースも多く存在します。
「一部貸し」は、以下のようなシンプルな考え方です。
・土地のうち、使っていない空間だけを他者に貸す
・契約内容や用途に応じて収益を得る
・残りの土地は自由に活用・保有を継続できる
この方法は、特に以下のような地主にとって魅力的です。
・自宅や建物の隣に土地があるが、今すぐ建てる予定はない
・将来的に相続・売却・転用も考えているため、柔軟に運用したい
・小さな投資から始めて、土地の収益性を試したい
■ 地主にとっての「一部貸し」の5つのメリット
① 初期投資がほとんど不要
建物を建てる必要がなく、整地・簡易設備だけで始められるため、投資リスクが非常に小さい。
② 土地の柔軟性が維持できる
将来、アパートを建てたい・売却したいなどの選択肢を閉ざすことなく収益化が可能。
③ リアルなニーズの把握につながる
小さく貸してみることで、地域の需要や利用者層を把握する実験の場として機能する。
④ 分割して複数の用途に使える
「一部は駐車場、一部は貸し農園」など、複数の収益源を一つの土地で実現できる。
⑤ 税制上も有利になる可能性
一部貸しであっても事業用地として認定されれば、固定資産税や相続税評価額の軽減対象になることも。
⇒ 「何もしない土地」を「少しだけ動かす」ことで、地主は大きなメリットを得られる可能性があるのです。
【第2部】地主に人気の「一部貸し」活用事例と収益モデル
■ ケース1:駐車場の一角を「キッチンカー用スペース」に
ある都市近郊の地主が所有する月極駐車場。日中は空きが目立つため、1台分の区画をキッチンカー業者に月極で貸出。
月2万円の収入が追加され、年24万円の増収に成功。
設備投資は看板と電源コード設置程度(約10万円)で、半年で回収。
【成功要因】
・商業施設が近く、昼間の集客が見込めた
・駐車場契約とは別枠で、イベント的な要素として歓迎された
・契約を1年単位にし、地主の都合で見直し可能な設計にした
■ ケース2:農地の一部を「貸し農園」に転用
地方に農地を持つ地主が、使い切れない一角(200㎡)を市民農園として貸出。
区画を10に分け、1区画月3,000円で年間36万円の収益。
手間は初期の区画整備と水道設置(約30万円)程度。
【ポイント】
・地目を農地のまま維持でき、農地法上の問題もクリア
・地主自身が耕作しなくても、遊休地を維持しながら収益を得られた
■ ケース3:敷地の一角を「トランクルーム事業者」に提供
住宅街の地主が、自宅隣の20坪をコンテナ型トランクルーム事業者に貸出。
設備・管理はすべて業者側が行い、地主は月額5万円の地代収入。
10年契約で、契約更新時には賃料交渉の余地もあり。
【メリット】
・地主は初期投資ゼロ
・管理負担もほぼなし
万一、将来的に別用途にしたい場合も、契約期間満了で切り替え可能
■ 活用ジャンル別「一部貸し」マトリクス
①キッチンカー 月2~5万円/台
初期費用:低
管理負担:中
適した地主タイプ:駅近・人通り多い立地
②貸し農園 月2~4千円/区画
初期費用:中
管理負担:中
適した地主タイプ:郊外・農地を持つ地主
➂トランクルーム 月3~8万円
初期費用:低~ゼロ
管理負担:低
適した地主タイプ:都市部・住宅地の隣地
④イベントスペース 日5千~2万円
初期費用:中
管理負担:高
適した地主タイプ:地域密着志向の地主
【第3部】地主が「一部貸し」で失敗しないための注意点と戦略
■ ① 用途地域と法規制の確認
「一部貸し」であっても、土地の用途地域によってはそもそも貸し出しできない場合があります。
・第一種低層住居専用地域では、商業的用途は原則不可
・農地法により、農地の転用は許可が必要
・建築基準法、消防法、都市計画法にも注意
⇒ 自治体に必ず事前確認することが、地主の基本動作です。
■ ② 契約書の作成と責任分界の明確化
・利用目的・利用時間・設備負担・保守義務
・事故時の責任(損害賠償の範囲)
・解約の条件(地主都合での早期解除含む)
特に「短期契約・用途限定型」として作ることで、地主が主導権を持ったまま貸せる仕組みになります。
■ ③ トラブル回避と近隣配慮
・音・臭い・通行など、「ほんの一部」でも周囲の生活に影響する可能性があります。
・看板設置は控えめに
・騒音対策や営業時間制限を設ける
・あらかじめ近隣に説明・合意をとる
地主は「貸したら終わり」ではなく、地域との信頼を失わないように気を配る姿勢が問われます。
■ ④ 成功するためのコツ:「試して、拡張する」
・「いきなり大きく始めず、まずは1区画だけ貸してみる」のが、地主にとってリスクの少ない戦略です。
・初期費用を抑えて様子を見る
・利用者の反応やトラブルを観察する
うまくいけば、徐々に拡張していく
⇒ 「小さく始めて、見直して、大きくする」この柔軟な考え方が、時代に合った地主型ビジネスです。
「土地は広くないと活用できない」
「建物を建てなければ収益化できない」
そんな常識に縛られていた地主こそ、「一部貸し」という考え方が必要です。
・一部だけ使うことで、残りの土地に自由度を残せる
・小さくても安定した収益源になる
・地域とつながり、次の活用につなげられる
地主が土地を「所有するだけ」の時代は終わりました。
これからは「土地をどう小さく動かすか」で、収益と信頼を得る時代です。
あなたの土地の一角が、
誰かのチャレンジの場になる――
そんな使い方を、今から始めてみませんか?