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契約前の最終防衛線!「重要事項説明書」と「売買契約書」に潜む特約条項の確認実務 【導入】

現地調査を終え、建物の状態や敷地の境界に問題がないことを確認したとしても、決して気を緩めてはなりません。

不動産取引において、真の防衛線となるのは「書面による法的確認」です。宅地建物取引業法に基づく「重要事項説明書(35条書面)」および「売買契約書(37条書面)」への調印は、法的な権利と義務を完全に確定させる行為であり、一度署名捺印を交わせば「知らなかった」「気付かなかった」という弁明は通用しません。

不動産売買では、ひな型通りの定型文の裏に、買主側に著しく不利な条件が「特約」として盛り込まれているケースが散見されます。大切な資産を将来の予期せぬ係争や金銭的損失から守るため、契約締結前に必ず点検すべき実務ポイントを解説します。

【第1部】買主側の権利を制限する「契約不適合責任」の免責条項

2020年の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改められました。目的物が契約内容と合致しない場合、買主は売主に対して「追完請求(修補)」「代金減額請求」「契約解除」「損害賠償請求」を行使できます。

しかし、実際の売買契約では、特約条項によってこの権利が大幅に制限されていることが多いため、厳密な精査が必要です。

・「契約不適合責任の全部免責」のリスク

売主が個人の場合、「売主は本物件の契約不適合責任を一切負わない」という全部免責特約が設定されることが一般的です。しかし、地中埋設物(過去の基礎ガラや古い浄化槽)や土壌汚染、給排水管の破損など、目視できない重大な欠陥が引渡し後に発覚した場合、その是正費用はすべて買主の自己負担となります。

・通知期間の限定

責任を認める場合であっても、「引渡し完了後3ヶ月以内に通知があった場合に限り責任を負う」など、権利行使の期間が極端に短く設定される傾向があります。期間の設定が妥当か、また免責の範囲がどこまで及んでいるかを精査しなければなりません。

【第2部】違約金リスクを回避する「融資利用特約(ローン特約)」の精緻化

金融機関からの融資を活用して物件を取得する場合、最も慎重に設定しなければならないのが「融資利用の特約(ローン特約)」です。

融資特約とは、万が一銀行の融資承認が得られなかった場合、ペナルティなしで契約を無条件解除し、支払済みの手付金の全額返還を受ける権利を指します。この条項の記載が曖昧であると、甚大な金銭トラブルに発展します。

・金融機関名・融資金額・金利の明記

単に「融資が否認された場合」と抽象的に記載するのではなく、「金融機関名(具体的な支店名まで)」「借入申込金額」「適用予定金利」「融資承認期日」を契約書上に漏れなく明記します。

・解除権行使期日と手続きの確認

融資承認期日と、万が一否認された場合の「契約解除期日」には十分な時間的猶予を確保します。期日を1日でも過ぎた場合、融資が下りなくても手付金没収(または売買代金の10〜20%に相当する違約金の支払い)を求められる事態に陥ります。

【第3部】契約前に必ず修正・確認すべき「必須条項マトリクス」

売主側から提示された契約書案に対し、買主(地主)として修正や追記を求めるべき主要条項を整理します。

◆ 売買契約における重点条項チェックマトリクス

境界明示義務
・売主有利な文面(注意点):「現況渡しとし、売主は境界標の明示を行わない」
・買主(地主)が求めるべき適正文面:「引渡しまでに、売主の責任と費用において隣接土地所有者の立会いを経た確定実測図を作成し、全境界標を明示する」

地中埋設物
・売主有利な文面(注意点):「地中埋設物が発見されても売主は責任を負わない」
・買主(地主)が求めるべき適正文面:「売主は引渡しから○ヶ月間に発見された地中埋設物(コンクリートガラ・古配管等)の撤去費用を負担する」

賃貸借の承継
・売主有利な文面(注意点):「売主は現況のまま賃貸借契約を買主に引き渡す」
・買主(地主)が求めるべき適正文面:「敷金・預託金等の返還債務を適正に清算し、滞納賃料の有無および全賃貸借契約書の原本を引き渡す」

公租公課の精算
・売主有利な文面(注意点):「起算日は1月1日(または4月1日)とする」
・買主(地主)が求めるべき適正文面:地域慣行(関東は1月1日、関西は4月1日等)を確認し、日割り計算の基準日と金額を明確化する

特に賃貸中の物件を取得する場合、「敷金の承継」と「滞納の有無」は厳密な確認が必要です。敷金の預かり金台帳と実際の賃貸借契約書を1件ずつ突き合わせ、引き渡しの精算時に確実に預かり敷金全額の控除を受ける必要があります。
不動産の売買において、「相手の担当者が信頼できる方だから」「大手仲介会社が作成した書類だから」という理由で書類の精査を怠ることは、経営者として避けるべき行為です。

・契約不適合責任の免責範囲を確認し、隠れた欠陥に対するリスクを過度に背負わない。

・融資特約は金融機関名や期日を厳密に設定し、予期せぬ違約金リスクを完全に排除する。

・境界明示や地中埋設物、敷金の承継など、曖昧な条項は契約締結前に必ず修正を求める。

調印の前には、必ず専門知識を持つ第三者の弁護士や資産税専門の税理士にも目を通してもらい、法的な安全性を二重三重に確認する姿勢が欠かせません。
細部まで整えられた公正な契約書を交わすことこそが、購入後の安定した賃貸経営と一族の平穏な資産保全を約束する唯一の道なのです。
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