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家族信託の裏側と税金!「信託中の不動産売却」と知られざる税務トラップ

「認知症対策としてアパートを息子に信託した。これで息子が代わりに売却や大規模修繕をできるようになったから一安心!」

そう喜んでいる地主さん、ちょっと待ってください。
家族信託は、不動産の「管理権」を子供に移す素晴らしい制度ですが、「税金(税務)の壁」を考慮せずに運用すると、思わぬところで国税庁のペナルティを浴びることになります。

家族信託における税金の基本ルールは「実質主義」。つまり、登記上の名義が誰であれ、「実際にその不動産から利益(家賃や売却益)を受け取る人」に税金がかかります。しかし、この一見シンプルなルールの裏には、地主を破滅に導く強烈な税務上の落とし穴が隠されているのです。

【第1部】信託スタート時は「無税」が原則!「自益信託」の基本構造

まず、地主さんが最も不安に思う「信託を始めたら贈与税がかかるのではないか」という疑問にお答えします。結論から言うと、通常の家族信託であれば、贈与税は1円もかかりません。

なぜなら、日本の税法では、以下の組み合わせで信託を組むことが原則だからです。

・委託者(財産を預ける人): あなた(親)

・受託者(財産を管理する人): 子供

・受益者(財産から出る利益を受け取る人): あなた(親)

これを「自益信託(じえきしんたく)」と呼びます。
財産を管理する名義は子供(受託者)に変わりますが、家賃収入や売却時のお金を受け取る「財布の持ち主(受益者)」はあなた自身のままです。

つまり、「自分の財産を、自分のために、子供に管理させるだけ」なので、実質的にお金は誰にも移動していません。そのため、スタート時に贈与税や不動産取得税といった重い税金が課されることは一切ないのです。

【第2部】税理士すら見落とす悪夢!「信託財産の損益通算禁止」の罠

しかし、信託がスタートしてからの「確定申告」や「不動産の売却時」には、非常に凶暴な税務トラップが存在します。それが、所得税法上のルールである「信託財産の損益通算(そんえきつうさん)禁止の特例」です。

通常の不動産経営であれば、個人や法人で複数の不動産を持っている場合、例えばA物件で大規模修繕を行って赤字(損失)が出たとしても、B物件の黒字(利益)や、個人の給与所得、他の不動産所得と相殺(損益通算)して、全体の税金を安くすることができます。

しかし、不動産を「信託財産」にした瞬間、この当たり前の税務メリットが剥奪されます。

【所得税法上の落とし穴】
信託財産から生じた赤字(損失)は、税務上「なかったもの(ゼロ)」とみなされ、信託外の他の黒字不動産の利益や給与所得と相殺することが一切できません。

このルールを無視して、安易にアパートの一部だけを信託したり、大規模修繕のタイミングを間違えたりすると、本来払う必要のない莫大な所得税を国にむしり取られることになります。

【第3部】損益通算禁止がもたらす「大増税」のシミュレーション

ここで、信託を組まずに個人でアパートを運用・売却した場合と、信託を組んだアパートで赤字や売却損が発生した場合の、支払う所得税の差を数式で可視化してみましょう。全体の課税対象となる「不動産所得」を求める計算式は、通常と信託内で以下のように分かれます

① 通常(信託なし):総所得 = アパートBの黒字額 - アパートAの赤字・売却損

② 信託あり(通算禁止):総所得 = アパートBの黒字額 (※信託Aの赤字は「0円」として切り捨て)

個人名義のアパートB(年間黒字500万円)と、家族信託を組んだアパートA(大規模修繕により年間200万円の赤字が発生)をベースに、2026年現在の所得税・住民税(簡易税率30%と仮定)でシミュレーションします。

◆ 信託なし vs 信託あり(損益通算禁止)の所得税負担比較

①パターンA:信託なし(通常の個人大家)
・アパートA(修繕):200万円の赤字
・アパートB(通常):500万円の黒字
・税金計算上の合算処理:500万円 - 200万円 = 300万円(損益通算)
・課税される総所得:300万円
・所得税・住民税(約30%):約90万円
・翌年への赤字の繰り越し:可能な場合あり(青色申告)

②パターンB:アパートAのみ「家族信託」を組成
・アパートA(修繕):200万円の赤字(信託財産)
・アパートB(通常):500万円の黒字(信託外)
・税金計算上の合算処理:500万円 - 0円 = 500万円(※赤字は相殺不可)
・課税される総所得:500万円(★修繕費の赤字が丸々ムダに)
・所得税・住民税(約30%):約150万円(★年間で60万円の大増税)
・翌年への赤字の繰り越し:絶対に不可能(その場で損失は完全消滅)

数式とシミュレーションが示す通り、まったく同じ修繕を行い、まったく同じ家賃が入っているにもかかわらず、「アパートAを信託財産にした」というただそれだけの理由で、年間60万円(30%換算)もの余分な税金を支払うことになります。

これは、信託財産を売却して「譲渡損失(売却損)」が出た場合も同様です。
信託アパートを売って大きな赤字が出ても、個人の他のアパートの売却益や所得と相殺することができないため、税務上の恩恵を一切受けられなくなります。
家族信託は、認知症による「資産凍結」を防ぐための2026年現在最も強力な武器です。
しかし、その武器の刃は、税務の知識を怠ると大家自身(受益者)に突き刺さります。

・大規模な修繕や売却の予定がある物件は、信託のタイミングを慎重に図る

・そもそも赤字が出るような物件を安易に信託の器に入れない

・信託に強い、不動産専門の税理士に必ずスキームをダブルチェックしてもらう

こうした徹底的な「税務ディフェンス」を施して初めて、家族信託は100%の安全装置として機能します。
「法的な手続き(司法書士)」だけで信託契約を終わらせるのではなく、必ず「税務の裏付け(税理士)」をセットにした、鉄壁の防衛体制を整えていきましょう。
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