相続登記の義務化から2年|「放置」が許されない時代の地主の守り方
「うちは先祖代々の土地だから、名義がひいおじいちゃんのままでも困っていない」
かつて、地主さんの世界ではそんな会話が珍しくありませんでした。名義変更(相続登記)には手間もお金もかかるため、「売る時や建てる時にやればいい」と後回しにするのが一つの慣習のようになっていたからです。
しかし、その「後回し」は2024年4月から明確な法律違反となりました。義務化から2年が経った2026年現在、これまで見過ごされてきた「名義不明の土地」に対して、国や自治体のチェックはかつてないほど厳しくなっています。放置することで発生する罰金や、思わぬトラブルの数々。地主として今すぐチェックすべき「登記の現在地」をお伝えします。
【第1部】「3年以内」のタイムリミットと10万円の過料
新制度のルールは非常にシンプルですが、強力です。
不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に相続登記をしなければなりません。正当な理由なく放置した場合には、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。
「たった10万円なら払えばいい」と思うかもしれませんが、問題はそこではありません。過料の対象になるということは、その土地が「公的にマークされる」ということです。2026年現在は、空き家対策や都市開発の観点から、自治体が未登記の土地を積極的にリストアップしています。一度マークされれば、後述する売却や融資の場面で致命的なブレーキがかかることになります。
【第2部】2026年の現場:登記をしていないと「何もできない」現実
制度開始から2年、地主さんの間で最も大きな影響が出ているのは、実は罰金よりも「実務上のフリーズ」です。
◆売却ができない
買い手が見つかっても、名義が先代のままだと売買契約が結べません。急いで登記しようとしても、数代前の相続人まで遡って何十人もの実印が必要だと判明し、契約が流れてしまうケースが続出しています。
◆銀行融資が受けられない
アパートの建て替えや修繕でローンを組もうとしても、銀行は「名義が今のオーナーでない土地」を担保に取ってくれません。
◆災害復旧や公共事業
万が一、地震などで被災した際や、道路拡張の対象になった際、名義が古いと補償金の受け取りや復旧工事が大幅に遅れるリスクがあります。
もはや「不便」というレベルではなく、登記をしていない土地は「資産としての価値が機能しない」状態にあると言っても過言ではありません。
【第3部】どうしてもすぐ登記できない時の救世主「申告義務履行届」
とはいえ、遺産分割協議がまとまらなかったり、相続人が多すぎて書類が集まらなかったりして、どうしても3年以内に登記ができないケースもあるでしょう。そんな時のために用意されたのが、「相続登記申請義務履行届」という制度です。
これは、法務局に対して「私は相続人ですが、今はまだ協議中なので登記できません」と届け出るものです。これを出しておけば、とりあえずの義務を果たしたとみなされ、過料を免れることができます。
ただし、これはあくまで「応急処置」です。最終的な解決(名義の確定)をしなければ、土地の売却や活用はできません。この制度を「時間稼ぎ」に使いながら、専門家を交えて複雑に絡み合った親族関係を整理し、単独名義に集約していく。2026年の地主には、そうした「攻めの登記管理」が求められています。
登記は「権利の証明」であると同時に、地主としての「責任の証明」でもあります。
2024年以前の相続であっても、遡って義務化の対象になる点に注意してください。
今すぐ、ご自宅や所有地の「登記事項証明書(登記簿)」を確認してみてください。もし、そこに書かれた名前があなた自身、あるいは今の所有者でないのなら、そこには見えない「爆弾」が埋まっています。
放置すればするほど、解決のためのコストは膨らんでいきます。家族の絆がまだあるうちに、そして国が本格的な強制執行に乗り出す前に、登記という名の「資産の戸籍」を綺麗に整えておきましょう。